苔生す

苔生す

徳川園

出会った時のことは
あまり覚えていない

交際をはじめた7年前から
一緒に汗や涙を流しながら
お互いに協力しあってきた


自分のことを理解してくれ 違いをすり合わせできる
相談しているうちに最後は 笑っている自分に気づく

それは年月をかけて 生まれた安心と信頼


いつかの日にみた 苔の庭のように
互いに侵食しあい 影響を与え合う

苔は 冷えきったり乾燥しているところには生えない
濡れたものと固いものが 結びついたところに生える

苔は永遠にそのまま存在するのではなく

古いものが土となり その中で新しい生命が誕生し広がっていく
それは ふたりの互いの慈しみと協力の結果のように見えてくる


記憶はうすらぎ 思い出は忘れてしまっても
生まれた安心は ゆっくり信頼へ育っていく
私たちふたりは 時間をかけ結びついていく

いつか年老いたとき 横ならびに庭を眺めながら
「一緒になって良かった」と零れる夫婦になろう

苔生すまで